トップ > 町議会 > 委員会活動記録 > 総務、教育常任委員会委員派遣報告(平成20年)

総務、教育常任委員会委員派遣報告(平成20年)

更新日: 2012 年 04 月 25 日

秋田県美郷町

平成20年9月9日
美里町議会議長 沼津敬太郎 殿
総務、教育常任委員会 委員長 櫻井功紀
総務、教育常任委員会委員派遣報告書
本常任委員会は、委員会規則第22条の規定により、下記のとおり調査を終了したので報告する。

1 調査年月日 平成20年7月14日(月)〜15日(火)
2 調査研修地及び調査事項
・研修地 調査事項 秋田県美郷町 児童生徒の学力向上と総合学習の取り組み、議会運営(陳情の処理)
3 参加者 櫻井功紀、武者美太郎、大橋昭太郎、吉城貢、千葉一男、村松秀雄
4 調査報告

秋田県美郷町の児童生徒の学力向上の取り組みと総合学習の取り組みについて

1 視察目的
秋田県は平成19年度全国学力テストで小中学生が好成績を収めた。残念ながら宮城県は全国平均を下回る状況であり、先進地である美郷町での教育行政について研修する。

2 美郷町の立地
秋田県の南部、仙北平野南東部に位置し、東は奥羽山脈を境に岩手県、南は横手市、西及び北は大仙市にそれぞれ接している。総面積は167.80平方キロメートルで、東西に14km、南北に20kmの広がりをもつ。 町西部は、標高40mから50mの発達した扇状地の先端部にあって、豊かな土壌に恵まれた県内有数の穀倉地帯を形成している。
気候は比較的温暖で、夏は高温多湿、冬は降雪が続き寒暖の差が大きく、冬期間の積雪は平均で平野部が1.5m前後、山間部においては2m前後に達する。
平成の大合併により秋田県第1番目として、平成16年11月1日に千畑町、六郷町、仙南村、2町1村の、新生「美郷町」の誕生となった。
平成17年国勢調査による町の人口は23,038人、世帯数は6,326世帯である。

3 平成19年度全国学力・学習状況調査結果の概要
<学力調査結果>
1、小学校国語
A(主として知識)=学習指導要領の領域全てにおいて全国の平均を上回っている。特に「言語事項」については大幅に上回っている。ただし、「話す・聞く能力」に関してはそれほど余裕があるわけではない。
B(主として活用)=学習指導要領の領域全てにおいて全国の平均を上回っている。ここでも特に「言語事項」に関しては大幅に上回っている。また、「書くこと」に関してもかなり上回っている。しかしながら、やはり「話す・聞く能力」に関してはやや上回っているといったところである。
2、小学校算数
A(主として知識)=学習指導要領の領域全てにおいて全国の平均を上回っている。特に「量と測定」「図形」に関しては大幅に上回っている。
B(主として活用)=学習指導要領の領域全てにおいて全国の平均を上回っている。ただし、Aに比べると全国も美郷町も正答率はかなり下がっている。特に、「数学的な考え方」に関しては全国の平均をやや上回るにとどまっている。
3、中学校国語
A(主として知識)=学習指導要領の領域全てにおいて全国の平均を上回っている。特に「話すこと・聞くこと」に関しては大幅に上回っている。また、「話す・聞く能力」に関しても同様に大幅に上回っている。
B(主として活用)=学習指導要領の領域全てにおいて全国の平均を上回っている。特に「話すこと・聞くこと」に関しては大幅に上回っている。また、「話す・聞く能力」に関しても同様に大幅に上回っている。また、「言語についての知識・理解・技能」に関しても全国の平均をかなり上回っている。
4、中学校算数
A(主として知識)=学習指導要領の領域全てにおいて全国の平均を上回っている。特に「数と式」「図形」に関しては全国の平均をかなり上回っている。
B(主として活用)=活用に関しては全国・美郷町共に、知識の正答率と比較すると全体的に低い傾向にあるが、全ての分野で全国の平均を上回っている。特に「数量関係」に関しては大幅に上回っている。また、「数量・図形などについての知識・理解」に関しても、全国の平均を大幅に上回る結果である。
<学習状況調査結果>
1、小学校
全て全国の平均と比較してであるが、例えば「自分にはよいところがある」と思っている児童が全国のそれを上回るなど、前向きに考えたり、生活したりしているようである。その裏付けとして、「いじめ」に対して「どんな理由があってもいけないこと」と思っている児童、「人の役に立つ人間になりたい」と思っている児童が、全国の平均をかなり上回っている。
家庭での学習も、例えば「家で学校の授業の復習をしているか」という設問に対して、全国の平均に比べてかなり上回る児童が「している」と答えている。
地域に関しては、「今住んでいる地域がすきか」という設問に対し「すき」と答えている児童が全国を大幅に上回っている。また、「地域の歴史や自然に関心があるか」という設問に対し「ある」と答えた児童が全国の平均をかなり上回っている。しかし、実際に海、山、湖、川などで遊んだことがある児童は、全国よりもかなり低くなっている。
また、毎日の起床時間、就寝時間については全国に比べて「一定感・規則性」がやや低い結果である。
家族の一員としての「お手伝い」に関しても、全国に比べるとだいぶ低い結果になっている。
2、中学校
中学校も、全て全国の平均との比較である。
学習塾等への、いわゆる「通塾率」は全国の平均からすると大幅に低い結果である。しかし、「宿題」をしているかどうかでは、全国の平均を上回るかなりの生徒が「している」と答えている。
家庭にあっての生徒の様子であるが「平日、家族と一緒に朝食をとっている」生徒も全国の平均をかなり上回っている。
学校での生徒の様子であるが、学校が楽しかったり、学校で友達に会うのが楽しいと答えている生徒が全国のそれをかなり上回っている。
また、近所の人に挨拶したり、いじめを悪いことだと感じたり、人の役に立つ人間になりたいと思っていたりする、前向きな生徒が多いと受け止めることができる結果である。
一方、ものごとを最後までやりとげたり、難しいことでも失敗を恐れないで挑戦してみる、といった積極性に関しては全国よりも低い結果になっている。
なお、美郷町は、小学校7校、全児童数1,073人、中学校3校、全生徒数615人である。(5月1日現在)

4 児童生徒の学力向上の取り組みについて(美郷町教育委員会)
1)町の予算額 28,757千円
2)町の取り組み
ア、学力検査の実施 秋田県学習状況調査対象外の児童を対象(町独自、小1年〜小3年)
イ、知能検査の実施 小2・5年、中1年を対象
ウ、児童生徒生活サポート事業の実施
生活支援員を各学校に1名以上配置(14名、内教職員免許所有者11名)→日本語支援員のみ県単補助1/2あり
1名分→普通交付税で1校当たり120万円の基準財政需要額として算入
エ、複式授業解消学習支援員の配置 教職員免許所有者1名を六郷東根小に配置  
オ、文科省の学力向上実践研究推進事業の受託 千畑地区 平成20年度〜22年度(小2校、中1校)
カ、全国学力・学習状況調査結果の分析と把握及び保護者への説明の働きかけ指導や学習の改善
キ、秋田県学習状況調査の分析と把握 指導や学習の改善

5 総合学習の取り組みについて(美郷教委説明)
1)町の予算額 1,000千円
2)町の取り組み
ア、環境を中心に据えた学習(水環境学習)の推進
イ、食育の推進

6 美郷町立仙南東小学校の現状(校長、教頭) 
1) 学校の概要
本校学区は純農村地帯で、児童の家庭はほとんど兼業農家である。
三世代同居両親が共働きのケースも多く、祖父母が世話をしている割合も高い。保護者(家族)や地域住民は学校教育へ理解があり、好意的で非常に協力的である。
児童数は1年〜6年、特別支援学級3名の合計121名である。
児童は地域の豊かな自然と恵まれた人間関係の中で、温厚で素直に育っている。しかし、児童数の減少や幼少時からのなじみの友達関係の中で、積極性や子供たち同士の磨き合いについてはまだ十分とはいえないが、あいさつやきちんと話すことが良くできるようになってきている。
2) 経営の方針
学校の主人公は、一人ひとりがそれぞれに違う子供たちである。その子供たちが誰からも大切にされ認められなければならない。また、学校は児童・保護者・地域から様々な願いを託されている。
 かけがえのない一人の人間の土台を作る義務教育第一段階の小学校生活を通して、「思いやりの心」を持ち「共に生きる力」を育んでいきたい。公教育の原則に基づき、保護者や社会からの信頼に応える学校づくりに努力していく。
3)学校教育目標
心をひろげ 夢を追って 強くのびる
〜 かしこく ゆたかに たくましく 〜
4) 今年度の取り組みから
ア、 基礎学力の定着と楽しく充実した学習指導
・ 教師の得意分野を生かした一部教科交換による指導
・ TT(チームティーチング)、一部学年合同による指導
・ 一人2回以上の校内授業研究会
・ 朝15分間のドリルタイム
・ 国語と算数のチャレンジテスト(年間10回)
・ 学習のきまり、ノート指導の共通化(保護者にも渡す)
・ 読書活動の推進、毎週1回水曜日(学級課題図書、家読の勧め、読み聞かせボランティアの協力)
・ 家庭学習、日記の勧め
イ、 健康で思いやりのある子どもを育むために
・ 「あいさつ」「礼儀」「きちんと話す」指導
・ 全校縦割りグループ(スマイルグループ)による活動
・ 全校で「体力つくり」に取り組む業間運動
・ 毎月の児童理解タイム、教育相談、児童アンケート(年3回)
ウ、 開かれた学校を進めるために
・ 学校支援地域本部事業の活用(図書室整理、小破修理、水泳、スキー)
・ 地域の教育力
・ ふるさと教育(美郷町探検・小正月行事)
・ 学校報(月2回)
・ 学区内全家庭へ配布の「学校ガイド」
・ サマースクール(10日間程度)
・ 仙東子ども見守り隊
5)授業参観
石田校長、高橋教頭の両先生の学校経営説明後、午後2時から3時まで1〜6学年、なかよし学級の5校時目の授業を参観し、教育現場を研修した。授業参観(美郷町立仙南東小学校)

7 視察のまとめ
少子化の急速な進行により、学校規模は全国的に見ても大幅に縮小されている。このことは、児童、生徒同士や教職員との人間関係は深まるが、学校生活を通じて社会性を育むことや、学校行事に一定の制約が加わるなどの問題があり、学校の再編整備を視野に入れた検討の時期が来ていると思う。
学習指導においては、「確かな学力」を身に付けさせ、個性と創造力豊かな児童生徒の育成を目指す教育活動の展開が必要である。
また、今後の国際化、情報化に対応できる資質や能力を育む教育の推進も共に必要となる。
平成19年度全国学力・学習状況調査の当町の結果について、教育委員会は真摯に受け止め、この調査を子どもたちの学習状況を把握する資料の一つと捉え、他の学校・自治体との競争や比較ではなく、子どもたち一人ひとりの個性や能力に応じた学習指導の改善のため役立たせ、将来の児童生徒の学力向上に向けた教育行政を強く望むものである。

議会運営(陳情の処理)について

1 視察目的
議会運営(陳情の処理)について、秋田県美郷町議会で研修し、今後の当議会の議会運営に資する。

2 議会運営(陳情の処理)について
1)秋田県美郷町議会陳情に関する規定
・会議規則第95条 陳情書又はこれに類するもので議長が必要があると認めるものは、請願書の例により処理するものとする。
・委員会規則 なし
・運営基準第130条 陳情書又はこれに類するもので、議長が必要と認めるものは、請願書の例により処理し、請願書の例により処理する必要がないと認めるものについては、議会運営委員会に諮って、その写し又はその要旨を印刷して議員に配布する。
2)陳情の処理
陳情書については、議会開会の一週間前に議会運営委員会を開会し、その中で担当の各常任委員会に付託する。
議会開会2日目は休会し、担当常任委員会で付託案件審査する。
議会最終日、付託案件の委員会報告をなし、意見書にあたるものについては委員会が提出者になる。
その結果については、提出関係、団体に報告する。

3 視察のまとめ
請願権が憲法で保障されているのと違って、陳情は法的保護を受けるものではない。したがって陳情を受けた当局側も、これに回答し、その処理の結果について報告する法律上の義務はない。最近の市町村では単なる資料配付扱いをする件数が増えてきている。
陳情に関する規定では、当議会も美郷町議会も、会議規則、運営基準とも同様文であるが、美郷町議会では委員会規則は設けていない。
美郷町議会では、年に数件の陳情上程であり、その都度担当常任委員会に付託審査を行っている。
当町議会としては、毎定例会に多くの陳情が上程され、各委員会付託は議会運営上難儀を伴い難しいと思料されるが、今後、陳情の処理について議会運営委員会を中心に検討すべき課題である。