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産業、建設常任委員会委員派遣報告(平成19年)

更新日: 2012 年 04 月 27 日

滋賀県甲賀市(こうかし)と酒人(さこうど)ふぁ〜む 平成19年7月12日〜14日

平成19年9月11日
美里町議会議長 沼津敬太郎 殿
産業、建設常任委員会 委員長 吉田眞悦
産業、建設常任委員会委員派遣報告書
本委員会は、委員会規則第22条の規定により、下記の通り調査を終了したので報告する。

1.調査年月日 平成19年7月12日(木)〜14日(土)
2.調査研修地および調査目的(調査事項)
1) 滋賀県甲賀市
2) 農事組合法人「酒人ふぁ〜む」の集落営農の取り組みについて
3.参加委員 吉田眞悦、武者美太郎、村松秀雄、梁川慶一、木村晴夫
4.調査報告

滋賀県甲賀市の農業法人「酒人ふぁ〜む」の集落営農の取り組みについて

1.滋賀県甲賀市の概要
甲賀市は滋賀県南東部に位置し、平成16年10月1日に旧水口町、旧土山町、旧甲賀町、旧甲南町および旧信楽町の5町が合併して誕生。 近畿圏と中部圏をつなぐ広域交流拠点に位置し、大阪、名古屋からは100km圏内の場所にあり、古くから近江と伊勢を結ぶ伊勢参宮街道として栄えた。昭和40年以降、工業団地の造成により多くの企業が進出し、内陸工業地として発展。また、区画整理や宅地造成により京阪神のベットタウンとして都市化が進んでいる。 地形では、東に鈴鹿山系を望む丘陵地で、野洲川、杣川、木戸川沿いに平地が開け、森林も多く琵琶湖の水源涵養、水質保全にも重要な地域となっている。
1) 人口 95,701人(H19.3末)
2) 世帯数 31,405世帯(H19.3末)
3) 面積 481.69平方キロ

2.甲賀市の農業概要
(1) 農家
総農家戸数 4,578戸(販売農家3,636戸)
総農家人数 22,218人
専業農家数 232戸
兼業農家数 第一種165戸、第二種3,239戸
(2) 農 地
水田面積 4,465ha
畑地面積 993ha(普通畑369ha、樹園地613ha、牧草地11ha)
ほ場整備実施面積 3,253ha(実施率81.8%)
農地の流動化 利用権設定590ha(設定率11.6%)
耕作放棄地 田 ⇒ 387ha、畑 ⇒ 12ha
(3) 経営規模(販売農家分)
1ha 未満 2,239戸 1〜2ha 1,089戸 2〜3ha 194戸 3〜5ha 85戸 5ha以上 56戸
(4) 農業産出額(百万円)
米 3,592 雑穀・豆類 63 菜 381 花き 16 種苗・苗木 4 肉用牛 36 鶏 391 麦 65 いも類 44 果実 23 工芸作物 783 加工農産物 456 乳用牛 444
合計 6,268万円
(5) 組合、担い手の状況
1) 農事改良組合数 149組合
2) 認定農業者数 105名 (内  法人数12)
3) 特定農業団体 33団体(特定農業法人4)
(6) 主な農産物の状況
・水稲はコシヒカリ、キヌヒカリ、日本晴れを中心として栽培されており県内でも有数の近江米産地として知られている。近年では、消費者ニーズに合わせた環境にこだわった米の生産も行っている。また、甲賀市小佐治地区では、特殊重粘土質土壌を活かし、もち米の中でも最高の評価を得ている「滋賀羽二重もち」の生産が行われている。
作付面積⇒ コシヒカリ 600ha キヌヒカリ 87ha 日本晴 724ha  ひとめぼれ 70ha あきたこまち 32ha 滋賀羽二重もち 119ha
・麦・大豆は、集落単位の話し合いによる転作水田でのブロックローテーション方式や互助方式等により作付されている。麦類は主に小麦の農林61号の作付であり、大豆は主としてフクユタカが栽培されている。
麦⇒作付面積 422 ha 生産量 1,091t
豆⇒作付面積 268 ha 生産量 302t
・茶は、甲賀市では主に、土山、信楽、水口で生産されており、栽培面積584haで一番茶、二番茶の生産量は712tと県内生産量の実に8割を占めており、甲賀産茶は関西の中でも有数の産地に数えられ「近江の茶」の代名詞となっている。
・畜産は、酪農業、養鶏業を中心に盛んで、特に飼育されている鶏の羽数は県内の4分の1にあたり、またブランドである近江牛の有力な産地となっている。
乳牛 ⇒ 1,084頭 肉用牛 ⇒ 444頭 採卵鶏 ⇒ 193,223羽 (H18,2)
・環境こだわり農業の推進
「環境こだわり農業」とは、化学合成農薬や化学肥料の使用量を通常よりも削減し、堆肥等を適正に使用し、排水を適正に管理するなど、環境に配慮して農作物を栽培することをいい、また、化学合成農薬と化学肥料の使用量を通常の5割以下に削減し、琵琶湖と周辺環境への負荷を削減する技術で栽培されたことを県が認めた農産物であり、消費者ニーズへの対応と農作物の高付加価値化に向け積極的に取組んでいる。
作付け状況 水稲 ⇒ 590ha 野菜 ⇒ 37ha 茶 ⇒ 18ha
・特産加工品
15の特産品加工グループがあり、地場産の新鮮な農作物を使用し、味噌、もち、漬物、こんにゃく、菓子類などに取組んでおり、伝統食の継承はもちろんの事、学校給食に提供されているものもあり、地産地消や食育の推進に大きな役割を果たしている。

3.農業法人「酒人ふぁ〜む」の概要
(1) 甲賀郡水口町酒人の概要
酒人は、滋賀県南部の甲賀市南西部に位置し、従来から稲作単作経営が営まれてきた。平成9年度から大区画ほ場整備事業に着手し、1ha区画の効率的な水田で水稲、麦、大豆、野菜作りに取組んでいる。社会構造は早くから町内外に多くの工業団地が立地され、また、京都や大阪への通勤可能範囲であることから雇用の場が潤沢であり、集落のほとんどが第二種兼業農家である。
(2) 農業法人「酒人ふぁ〜む」の概要
はじめに、「人の輪と集落の和」を基本テーマに若きオペレータが目的を持って歩む、そんな集落を夢見た酒人に住む農家自らが考え組織した「営農組合酒人ふぁ〜む」を平成11年3月に発足、集落一農場方式による営農を開始。さらには「人は人の為にならずして、人にあらず」と激変する農業情勢に対応し創意工夫あるビジネスを展開。組合員の利益を確保しつつ、農村集落酒人を維持発展させるため、平成14年12月13日に「農業法人酒人ふぁ〜む」を立ち上げた。
1、設立日 平成14年12月13日
2、組合員 56名
3、出資金 4,480,000円
4、役員 理事7名、監事2名
5、事業内容
1) 農業の経営およびこれと合わせ行う林業の経営
2) 農業の経営に付帯する一切の事業
(3) 21世紀型農業の条件(平成14年集落営農ビジョン委員会まとめ)
1、ほ場基盤の整備 「一ほ場1ha以上」
2、1haほ場対応の機材と施設の整備 「集落一農場確立」
3、企業センスで儲ける百姓 「アグリビジネス参入」
4、意欲ある女性と高齢者を核とした新しい展開 「米に依存せず」
5、支え守るのは若者、見守り知恵を授けるのは年長者 「輪と和」
(4) 経営展開
1、生産調整50%への挑戦
水稲、麦、大豆の2年3作体制 「2ブロックローテーション」
2、環境こだわり農業の実践
洗わず食れる軟弱野菜 「ほうれん草、小松菜、サニーレタス」
減農薬、減化学肥料野菜 「かぼちゃ、ブロッコリー」
3、土日祭日で味わう最高の贅沢
自らの食を生産し味わう 「集落民全員」
4、自作農家、入作農家、経営受託農地のゾーン設定
水稲は水が鍵、水系によるゾーン配分 「農用地利用改善団体」
5、人の手でしか出来ない作業の創造
ノーワーク、ノーペイ(働かざるもの無報酬) 「集落民全員による年齢と体力に応じた作業体制」
なごやか営農グループ ⇒ 生ごみ堆肥によるハウス野菜栽培
すこやか営農グループ ⇒ ほ場管理と露地野菜栽培
やすらぎ営農グループ ⇒ おしゃべりと雑草取り(ボランティア)
(5)酒人ふぁ〜むの取り組みについて
酒人集落は、ほぼ全戸が第二種兼業農家であり、昭和の終わりから平成の初頭にかけて、農業離れが進行し、集落機能崩壊や農村集落の崩壊の危機意識が芽生えた。集落の農地をどのように守っていくか委員会を作り、時間をかけて話し合いを進めた結果、集落一農場方式で組織営農に取り組むこととなった。「集落の農地は、自分たちの責任で後世に引き渡そう」、「集落みんなが参加し、オペレーターとして活躍できる青・壮年男性だけが農作業を担うのでなく、年
齢別になごやかグループ・すこやかグループ・やすらぎグループの3つの営農グループを組織し、それぞれ施設野菜担当、露地野菜、水稲栽培管理担当、雑草取り担当等収穫出荷や管理作業を任せることとした。酒人集落の農地(約53ha)の内、「酒人ふぁ〜む」が約40haを経営しており、昨年度の作付け状況として、水稲7品目2,055a、麦1,525a、大豆1,042a、野菜262aで土地利用率では131%となっている。水系を考慮して、農地(40ha)を2つのブロックに分け、水稲、麦、大豆の2年3作のローテーションをおこない、生産調整率は50%に達している。
(6) グループごとの役割分担について
1、オペレーターグループ(ふぁ〜む直轄) 酒人地区に居住し、集落営農の趣旨に賛同し、オペレーとして出役する営農意欲のある20歳以上55歳以下の男子(登録制)
2、なごやか営農グループ(組合組織) 酒人区民で、集落営農の趣旨に賛同し、組合の業務(作業)に出役する56歳以上65歳未満の男子および20歳以上65歳未満の女子。生ごみ堆肥によるハウス野菜栽培と環境こだわり農産物を栽培している。
3、すこやか営農グループ(組合組織) シルバー世代(老人会メンバー)の酒人区民で、集落営農の趣旨に賛同し、組合の業務(作業)の一部を担当するグループ。ほ場管理と露地野菜栽培。
4、やすらぎ営農グループ(ボランティア)  井戸端会議のメンバー(酒人敬老会の横綱・大関)で、雑草取りの名人。おしゃべりと雑草取り。

4、現地視察
市役所での説明の後「酒人ふぁ〜む」の施設等現地調査を行った。降雨のため大豆等の作業現場に行けず、施設内での研修となり大変残念であった。所有している機械は大型で効率もよく、機械の格納庫も十分な広さを確保していた。品種毎の作付面積の割合に機械の台数が多いと感じられたが、作業は兼業のため作業計画で土、日、祭日に作業を実施するため必要な台数とのことであった。米の乾燥施設の1日あたりの処理能力は2haで稼動しているとのこと。

5、視察のまとめ
酒人ふぁ〜むにおける集落営農組織は、酒人地区の第2種兼業農家が大多数を占めているため非耕作農地を荒らさない考えと農業後継者不足から将来を見据えて出発した。どこの地域も抱えている問題であり、我々も集落営農組織の先進地と捉えて視察を行った。水田、転作への従事は、登録制による作業であり、事前に計画した作業工程による仕事である。作業員に自分の持分を自覚させ、自分の作業日は責任を持って行うようにするためである。また、年代別に農業の担当分野を定め、集落の全員が関わる方式をとっている。酒人ふぁ〜むにおける集落営農組織は、兼業農家主体の形態となっている。本町ならずとも、担い手・農業後継者の確保が、心配されているところである。自分たちの住む土地は、自分達で守るという共通認識を持ち個々の経営から効率のよい機械体系の下、組織経営を地域一丸となって取組んでいる事は、平成22年までの集落営農組織の法人化に向け参考になるものと思われる。本町は、今後とも地域の実情に合った集落営農を推進し、農業経営の安定につとめていくべきと考える。また、関係機関と協力し、農業全体の振興に努められたい。