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産業、建設常任委員会委員派遣報告(平成20年)

更新日: 2012 年 04 月 25 日

岩手県金ヶ崎町と秋田県大仙市

平成20年9月9日
美里町議会議長 沼津敬太郎 殿
産業、建設常任委員会 委員長 吉田眞悦
産業、建設常任委員会委員派遣報告書
本常任委員会は、委員会規則第22条の規定により、下記のとおり調査を終了したので報告する。

1 調査年月日 平成20年7月17日(木)〜18日(金)
2 調査研修地及び調査事項
研修地 調査事項
岩手県金ヶ崎町 企業誘致と定住化促進策について
秋田県大仙市 大規模集落営農の取り組みと米の契約栽培について
3 参加者 吉田眞悦、我妻薫、平吹俊雄、梁川慶一、相澤清一、沼津敬太郎
4 調査報告

企業誘致と定住化促進策について

1.視察目的
関東自動車などの企業進出と農業振興の関わりや他町村との連携などについて調査研修。


2.概要
(1)金ヶ崎町の概要
1) 岩手県南内陸部に位置し、奥羽山系駒ケ岳の東方に開け、西部は山岳地帯、続いて丘陵地、平坦地と緩傾斜と呈し、東端を北上川に接する。
2) 古くから米作地帯として第一次産業の就業人口が多数を占めていたが、近年その割合は減少傾向にあり、米、畜産、野菜の複合経営が行われている。
3) 岩手中部工業団地への大手優良企業の立地・操業により、第二次、第三次産業の就業人口比率が高まってきている。
・昭和55年国勢調査時における就業人口比率
第一次 39.9% 第二次 26.9% 第三次 33.2%
・平成2年国勢調査時
第一次 33.8% 第二次 32.1% 第三次 34.1%
・平成17年国勢調査時
第一次 21.3% 第二次 33.7% 第三次 45.0%
(2)工業の概要
1) 工業団地は岩手中部(金ヶ崎)工業団地と北部地区流通業務工業団地、森合工業団地の3箇所であるが、中核は岩手中部工業団地であり、その事業主体は岩手県を主体とした第3セクター「株式会社岩手開発」である。
全体面積の310.5ha中、工業用地面積は181.3ha、企業間に多くの緑地が取り入れられている。
2) 岩手中部工業団地の立地企業は、昭和55年操業の富士通マイクロエレクトロニクス梶A昭和58年操業の塩野義製薬鰍はじめ25企業が立地、うち23企業が操業している。そのうち、関東自動車工業滑竡闕H場をはじめとする自動車関連は14企業となっている。
関東自動車工業滑竡闕H場の敷地面積は100haで、その敷地内には自動車部品企業が4社も入っている。
3) 岩手中部工業団地の従業員は、平成20年4月1日現在で6,347人(うち自動車関連企業は4,007人)そのうち金ヶ崎町内在住者は1,171人(同798人)と20%程度となっている。7〜8割の従業員は隣の北上市からの通勤となっている。
人口は、微増傾向で岩手県の増加自治体5つのうちの一つとなっているが、昼夜間人口比率は120.3%と県内で一番高く、近隣市町から働きに来ている人の多いことを示している。
4) 税収は、町民税が7億円強、固定資産税が15〜16億円となっており、人口一人あたりの市町村民所得は、平成17年推計で3,599,567円、県平均の2,359,469円を大幅に超えて県内一となっている。
固定資産税の優遇措置としては、3,000万円超の製造業に3年間の課税免除、5,000万円以上で町内居住正社員5人以上増加・継続すれば4・5年目も一定を補助することになっている。
5) 従業員等の安定化対策については、持ち家建設者に支払利子の一部を5年間補助する「住宅建設資金金利負担軽減補助金」が平成4年度から施行されている。新設住宅着工は平成17年の290戸余がピークで16年・18年が160戸余、世帯数も平成12年の4,934戸から19年には5,465戸に増えている。それでも前述のとおり従業員の多くは北上市など近隣自治体からの通勤となっているのは、20分程度の通勤時間ですむという地理的条件も関連している。

3.視察のまとめ
1) 金ヶ崎町内にある岩手中部工業団地が誘致企業の中核を占めるが、当団地は県を中心とする第三セクターが造成したもので、町としては特段独自の施策を行った結果ではないこと、外的条件に恵まれたとみることができる。
2) 昭和55年の富士通エレクトロニクス株式会社を皮切りに企業が立地されているが、平成2年までに6%程度が第一次から第二次に移行し、第三次はほぼ横ばいとなっていたが、平成17年では第一次が12%減少し、その分第三次が増えている傾向が見られる。しかも関東自動車工業株式会社が工場を立地した平成2年と17年では製造業に就業している人数は横ばいとなっている。このことは、関東自動車工業株式会社によって製造業従事者が増えているとは言えないということで興味深い。
第一次産業の減少分は、サービス業に吸収されているようにみることができる。
3) 工業団地の企業の従事者の7〜8割が、北上市など近隣の市町からの通勤であることで、思っていたより住民税への見返りは少ない様子、ただ、固定資産税は昭和55年の2億5千万円から6倍以上になっており、町財政に大きな貢献をしている。
北上市などからの通勤が多い理由として考えられるのは、通勤時間が20分程度と近いこと、そして商業施設などを主とした便利な生活環境にあるのではないかということ、さらに、通勤時間があまりかかりすぎることは敬遠されることも意見交換の中で確認された。
4) 工業団地等の造成、従業員の定住化対策等々、今後の本町の施策を検討する際のいくつかのポイントとして参考にしていきたい。

大規模集落営農の取り組みについて

1 視察目的
秋田県大仙市協和地域の営農組合の取り組みと米の契約栽培(イオングループ)について調査研修。

2 秋田県大仙市の概要
(1)農家
農家戸数 9,723戸(世帯数に対し34.3%)
農家人口 42,203人(人口に対し45.2%)
農業従事者数 12,193人
専業農家 878戸
兼業農家 第一種 1,550戸(18.3%) 第二種 6,041戸(71.3%)
(2)農地
耕地面積 17,562ha
水田面積 17,665 ha
畑地面積 865 ha
樹園地 30 ha
一戸あたり経営面積 2.07 ha
(3)農業産出額(単位千万円)
米 1,583(69.8%) 畜産 213(9.4%) 花き 29(1.0%) 野菜 346(15.2%) 雑穀 38(1.7%) 工芸作物 26(1.0%)
総額 2,269千万円

3 大仙市の農業関係施策について
(1) 産地づくり推進事業費 1,052万円(市1,052万円)
地域振興作物等の産地づくりを推進するもの。
・生産調整の確実な実施と地域振興作物等の作付け拡大 → 1,500円/10a
・燃料菜の花の作付け拡大のための実証圃を設置
(2) 農業振興情報センター費 1,868万7千円(市1582万9千、国県135万、その他150.8万)
農業後継者育成と市場や消費者ニーズにあった野菜、花き等の試験栽培、新規作物の導入を検討し、農家の栽培技術向上と経営安定を図るもの。
平成20年度は2名の研修生あり。
(3) 目指せ“元気な担い手”農業夢プラン応援事業費 1億1,592万3千円(市3,261万9千、国県8,330万4千)
農業機械・施設整備に対して助成し、担い手の育成を図るもの。
水稲 県1/3 市1/12  
施設・アスパラ 市1/6
(4) 農地・水・環境保全向上対策事業費 1億11万3千円(市9,411万3千、国県600万)
地域に存する農地、農業用水等の資源や農村環境の良好な保全と質的向上を地域全体で取り組むもの。
(5) 畑作園芸振興事業費 521万4千円(市521万4千)
稲作依存の農業から脱却し、畑作物の振興を図るため規模拡大等を進める農業者に助成する。
アスパラ 1/4以内の助成
(6) 集落営農法人化推進事業費 1,576万4千円(市1,276万4千、国県300万)
水田経営所得安定対策の対象となる担い手を育成・確保し、農業経営の改善と指導を行うもの。
現在
集落営農組合 71組織 1,191人(協和地域は全て法人化した)
法人 34組織 396人

4 農事組合法人「たねっこ」(大規模経営)の取り組みについて
協和地域の雄物川中流湾曲部に広がる小種地区の5つの集落が、平成13年より県営担い手育成基盤事業で大規模区画整理(1ha区間 50m×200m)を施行してきた。
以前は、転作田として活用する農家はほとんど無く、休耕田として放置されていたが、集落営農の話が浮上した5年前に、5集落別々にやろうという意見が出されたが、大規模ほど農地集積のメリットが大きいとの判断のもと、5集落一つの経営組合としてスタートすることになった。
また、5集落に分かれていても、運動会や祭りは常に一緒、地区の問題は5集落の協議会で話し合い、以前からの結びつきによる強さが幸いしたとのこと。
(1)組織概要
設立(登記) 平成17年3月25日
組合員 130人
出資金 20,513千円(当初2,380千円→1,000円/10a)
経営面積 240ha
主な作物 水稲、大豆
経営目標 ・農用地利用改善事業 ・大豆加工部門導入 ・ハウス野菜の取り組み
(2)組織運営体系
3つの部会(ライスセンター部会・転作部会・受託作業部会)と5集落単位の運営委員会をもって運営している。
◎ライスセンター部会
処理能力 120ha規模のライスセンターを設置。
事業費 2億8,285万(56%補助) 200t丸ビン2基
循環型乾燥機 8t 3台 5t 2台 (いずれも大豆兼用型)
6インチ籾摺機 2台 荷受処理システム 外関連施設
平成19年度利用面積 水稲180ha 982t⇒能力の1.5倍 大豆55ha
◎転作部会
夢プラン応援事業にて、大豆兼用管理機3台、ブームスプレーヤー1台、大豆コンバイン3台、色彩選別機、大豆クリーナー等設置(ライスセンター内)。
平成20年作付 大豆67ha ブロッコリー1.7ha  キャベツ0.7ha等
ハウス270坪で花(アスター、けいとう)
◎受託作業部会
6条刈コンバイン2台、8条植田植機6台
作業面積 耕起、代掻、田植→180ha
刈り取り、運搬→95ha
大豆に関する作業受託
特別栽培米(減農・減化)「たねっこブランド米」への取り組み
水稲原種圃13ha 水稲採種圃10ha
(3)米の契約栽培について
「たねっこ」生産のあきたこまち800tをイオン独自ブランド「トップバリュグリーンアイ」商品として販売。
生産された米は、JA秋田おばこに出荷保管。神明で精米、袋詰めを行い、イオンが「グリーンアイ特別栽培米あきたこまち」として、全国のジャスコなどイオン系小売店で販売する。パッケージには、たねっこの法人名が記載されている。
「たねっこ」は、大規模な面積を一律に管理でき、イオンが求める減農薬、減化学肥料の米を生産できるとして栽培先に選定された。
・トップバリュグリーンアイとは
農薬や化学肥料、抗生物質、合成添加物の使用を抑えて作った。
農・水・畜産物とそれらを原料に作った加工食品ブランド。
・グリーンアイの基準
1) 人口着色料、人口保存料、人口甘味料を使わない食品
2) 化学肥料、農薬、抗生物質などの化学製品の使用を極力抑えて生産
3) 適地、適期、適作、適肥育など、自然力によるおいしさを大切に
4) 環境や生態系の保全に配慮した農業をサポート
5) 自主基準に基づき、生産から販売までを管理

5 視察のまとめ
1) 大仙市協和地域では、集落営農組合が全て法人化(13法人)されている。その要因として、ほ場整備事業と県による地域内に入ってのあぜ道ミーティングが功をなしている。直接対話の大事さが伺えるところである。
2) 大規模集落営農組合の誕生においては、地域の行事や協議会での話し合いなど、農村社会の昔からの結びつきの強さが幸いとなっており、本町においても今後の法人化に向けて大いに参考になるところである。
3) 過大な投資をしないよう、組合員の育苗ハウスやトラクター等を借り上げて有効利用している。ただし、今後、機械の更新については、個人で購入しないように申し合わせている。組合内では対話を尊重し、決して無理をせず、急激な前進ではなく、一歩一歩の積み重ねを大事にしている。
4) 大規模経営のスケールメリットを生かした作物別団地化や栽培方法の一元化により、大手企業との契約栽培も可能となった。また、地区が一つの大農場になったため、ハウス栽培も含め多様な仕事も生まれ、高齢者や女性の雇用の場になっている。いつでも、何時間でも一般作業は時給900円(オペレーターは1,000円)で働けるシステムも組合員から好評である。
以上のことから、新たな美里農業の展開や確立、集落営農組合の法人化に向け、大いに参考になるものであり、本町においても対話と昔からの農村集落のつながりを大事にしていけば実現可能であると思われる。